わしの日記
2012/09/02 (日)
言葉の趣味
「独断と偏見により…」という言い方が嫌いだった。
これは、僕が小学生のころ、流行ったのだと記憶する。『3年B組金八先生』を好きな連中が主に好んで喜んで使っていた。だから、この言葉を思い出すと、いつも武田鉄矢の顔が浮かぶ。勝手に、この人がバラエティか何かで使い出したのだろうと思っているが、真相は知らない。
未だに言ったり書いたりするのを見かけると、ちょっと嫌に思う。
何が嫌なのかうまく説明できない。僕の言葉に対する趣味嗜好は、だいたいそんなものである。感覚は説明できない。そこに、過去の経験や感情が絡んできているのかもしれないが、そうなるとますますわからない。分析を妨げるのもまた現在の自分であるし、とにかく嫌なのである。言葉が嫌というより、喜んで使っている連中が嫌いなのかも知れないと思うときもあるが、それ以上追求しようとも思わない。
最近になって、同じような感情(?)を呼び覚ます言葉に出会った。
それはいま働いている職場の、ある規約の中で使われていた(あまり詳しく書いて特定されても困るので、これ以上書かない)、「現物主義」という言葉である。
必ず実物を確認し、机上の確認で終えないこと、というようなニュアンスを表現する、簡潔な標語なのである。
なるほど、何もおかしな内容ではない。むしろ立派である。
では何が気に入らないのか。それは、現物というと、麻雀用語のような気がするからである。
麻雀風の言葉を使うのは、小学生ぐらいの時に誰もがかかる病気だ。
一番使われるのは「対面」をわざわざトイメン、と発音することだろう。次によく聞くのは「(一連の仕事を)イッキツーカンに……」という言葉。
これらは、元々は軽い冗句で誰かが使ったものが広がったのだろう。ビジネス社会にありがちなことだが、「よくわからんけど言葉を真似しちゃう」光景をよく見かけないだろうか。だいたい、言葉の意味をしっかりわかって使っている会社人なんて、特にITの現場では、わしゃーほとんど見たことないよ。IT業界の日本語のいい加減さはもう、嫌気がさしている。失笑を通り越して、こいつらはギャグで言ってるんじゃないか?!と頭を振り回して耐えている。
話を戻そう。
たとえば、交通の話で対向車のことを「トイメンから来たクルマを……」と、ことさらにくだけた言葉で表現されると、僕は不愉快である。
また、「さっき食堂のトイメンにさ、○○社のひとが居て……」なんて言われたりする。
「トイメンだったからチーできなくてサ」「食えないひとだからねぇ」ぐらいまでヒネってくれれば、ちょっとした落語風で、許せるんだけどね。
さて、不愉快さを抑えて、「現物(げんぶつ)」を調べてみた。
すると、予想に反して、国語辞典にはそのようなニュアンスは全く記載されていなかった。むしろ、麻雀側で、この言葉を流用したものらしい。
……というように、僕の言語感覚はまだまだ間違いだらけで、恥ずかしい思い違いも多いようなのである。
偉そうに腹を立てているが、全く滑稽なことだ。今後はしっかり辞書を引こうと思った。