わしの日記

2005/09/13 (火)

インテリジェントパークの弁当屋さん


府中のインテリジェントパークにある会社に勤めているのだが、ここには公園があり、昼になると弁当屋が集まってくる。
以前は道路に車を停め、看板を立て、人が立ち、冷めないように、発泡スチロールの箱に、たくさんの弁当を詰めて、"営業"していた。
しかしやがてお巡りさんがやってきて、取締りを始めた。いくら交通量が皆無に近い道とは言え、クルマが走行する「道」であることは確かであるから、取り締まらざるを得ないのだろう。いや、それとも何か別の法律や、市の条例にでも触れたろうか? とにかく取り締まりを実行したのは、保健所のひとや市役所の職員ではなく、まして地元町内会などでもなく、お巡りさんであった。

弁当屋の中でも老舗である「○○○屋」は、車にペイントをしてロゴを入れるなど、本格的である。
二箇所に出没するのかとわしは思っていたが、同僚に聞くと、そうではなくて一号車・二号車があるんだと。実に本格的である。
その「○○○屋」さんは、以前からしばしばお巡りさんに注意を受けていたが、そのたびに、
「負けずにがんばりまーす」
と、お客たちに声をかけながら撤退していくんだと。ホントかね。しかし実にホントらしい話である。

雨が降ろうが風が吹こうが、彼らはそこにいる。
わしは心中ひそかに、この並びを『弁当銀座』と名づけている。
最近は、みな、傘を開くのが流行のようだ。どの店も、どこかに車を隠して、弁当やら看板やらを公園に運び込み、ビーチパラソルよろしく、傘を広げる。それが店というわけだ。今では、10個近く、傘が並んでいる。
晴れの日は日傘として、雨の日は文字通り傘として、パラソルたちは活躍している。

先日は台風が来た。
きっと台風の日でも、あの弁当屋はいるだろうと思って、会社の窓から覗いて見ると、やはり、居る。期待通りだ。
しかし、さすがに客は居ない…と思ったら、一人居た。売るほうも売るほうだが、買う方も、只者ではない。何しろ、台風で、公園の樹が大きくしなり、いつもより心なしか、屋台の数も少ない。びゅーびゅーと雨と風が横殴りに吹き付けるのが、よく見えるのに、この人たちは、道端で屋台を広げ、弁当を売り、また、わざわざ買いに来ている。すごい。

と、案の定、突風が吹き、弁当屋さんの傘が、逆さに開いて、まるで折り畳み傘を開き損ねたときのように、反り返ってしまった。あまりの風に、傘の骨も折れたようだ。

しかし、弁当屋のおばさん…じゃかわいそうだから、奥さんにしておこう…はまったく慌てない。
慌てず、奥さんはもう一本の傘を取り出し、開いた。そして営業を続行する。

…なぜ逃げない? いくらなんでも、傘が吹き飛ばされる中、もう誰も、公園まで、弁当なんか買いに来ないと思うが…
とにかくここの弁当屋はすごい。戦場でも弾をかいくぐりながら、塹壕から塹壕へ、平気で出前しそうだ。